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大きなヒツジ
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怖るべき子供達
2008年 08月 13日 |
「恐るべき子どもたち」は 雪の場面から始まる。 雪玉の中に入っていた石で 頭にけがを負うポール。 残酷な子供たちの遊びから この世界は始まる。

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エリザベートとポールは姉と弟。 2人は 仲がよい。 姉の結婚のあとも その家を2人は好みの家に変える。 姉の夫が死んだあとも その悲しみにはうちひしがれない。日常はたんたんと続くのだ。

「ただ なにかしていないと いたたまれないのよ。」と エリザベートは言う。 夢幻の世界で遊び続ける 姉と弟。

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私がM君とつきあい始めた時 彼は18。 25までを彼と過ごした。 私たちはほんとうの姉と弟ではないので 私の結婚で終わった。 



初めて彼とベッドに入った時 私たちは笑い転げた。 笑いがこみ上げて どうしても止まらないのだ。 お互いの服を引きちぎりながら 笑いがこみ上げる。 笑うのをがまんするためにお互いの唇を吸うのだが その唇の端から 笑いがもれてくる。 あの瞬間 あれは幸せと呼ぶものなのか。私たちは ずっと 我慢し続けていた のだと思う。 しかし寝ることがあまりにも自然で 自然なことがなされなかった理不尽があまりにも滑稽に思えたのだと思う。 そして 2人して笑い続けた。それは 私たちのお伽話のはじまりであった。

今では 私は3人の子持ち。 そして 私より五年遅れで結婚した彼にも 息子が一人いる。 私たち2人の子供 2人の遺伝子を受け継ぐ者がひとりも存在しない不思議。

あまりに雪がふったせいであろう。 私は 電話をしてしまった。六年ぶりである。東京を引き払った時 彼の結婚式に出て それ以来 賀状の交換以外はしていなかった。 土曜日の朝。 寝坊の彼が起きる時間。 11時は こちらでは 午前3時だ。

電話には 幼稚園に行く息子が出た。「おとうさん いらっしゃいますかぁ?」という 我ながら間の抜けた質問の声。 廊下を歩く音がして 「パパ でんわー。 おんなのひとから」と 声をかけている。どうやら ベッドの中だ。 まだ寝ていたらしい。

「もしもし」「・・・・」「秋月です。」「わかるよ。言われなくても。どこにいるの? 東京?」  六年ぶりの電話に いきなりどこからもないもんだと思うが その時 彼の息子の声がする。「パパ だぁれ?」

一瞬 静かな空気が流れる。

「パパの一番 大切なひとだよ。」

まいった。 あなたはあいかわらず 恐るべき子どものままなのだ。

そして 私は共犯である。


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怖るべき子供たち (角川文庫 (コ2-1))
ジャン・コクトー / / 角川書店
ISBN : 4042047017
by ovejagrande | 2008-08-13 07:56 | ものがたり |
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